ツアーの途中、何度か東京を行ったり来たりしている。
たくさんの人、ビル、音。
とにかく目や耳に入る情報が多すぎて、田舎者の僕にはものの一時間ほどでおなかいっぱいになってしまう。
特に新宿はおびただしいほどの数。
日中も、夜中でさえどこからともなく人が湧水のごとくわき出してくる。
ビルのネオンも相まって、まるでパチンコの大当たりのような光景がそこにはある。
先日、岡山出身でこちらに何年も住んでいる方とお話しする機会があった。
その方は新宿のことは好きだという。
なぜかと問うと、
「良いくらいの人の多さ」だそう。
そういえば前に聞いた人も
「新宿はね、良いくらいにみんな人に興味がないんだよ。だから安心する」
と言っていた記憶がある。
たしかに、田舎道を歩くとすれ違いざまにジロッと見られることが多い。
おばあさんやおじいさんにいたっては、立ち止まって身体に穴があくほど見られたり。
新宿ではまずそれがない。
でも僕はそれが”安心”につながるまでの境地にはまだ達していない。
よく、田舎はやさしい!都会はつめたい!という言葉を耳にする。
それは言い換えれば”田舎はお節介でイヤ、都会はそっとしてくれて良い”とも言える。
その時の気分でどうとでも受け取り方は変わるもの。
もちろん自身も例外なく。
東京もついに梅雨に入った。
紫陽花がきれいに咲きそろう季節だ。
紫陽花の花言葉は”移り気”。
なんだか人間ぽくていいじゃないか。
僕は特異な人間ではなく、ただの人。
だからふつうのことしかできない、奇は衒えない。
昼は笑って、夜は沈んで、泣いたと思えばお腹が減って。
寝たかと思えば翌朝忘れて、妬んだ昨日はネタになる。
ふつうのうたを、本気でうたうよ。たぶんおおかたおそらくぜったい。