マイナーチェンジ

 

先日から急に気温も下がり、夏まんてんだった空もどことなくくすんだ気がする。

 

いつのまにか蝉時雨もやんで、これからあたらしい季節に移り変わってく。

 

 

 

そんな肌寒い夜、ごぶさただった友人に電話をかけてみた。

いままでも何度か電話をかけていたのだが、しばらくバタバタだったのと、ちょうどお互いタイミングが悪いのも重なってなかなか話せなかったのだ。

 

 

 

「ひさしぶりー、元気?」

 

「うん、そっちは?」

 

「うん、相変わらず。」

 

「それはそれは良いこと。」

 

 

 

いつもこの調子。

 

身体を気遣う言葉をかけあっているのだが、ほんとはお互い大して気に留めていない。

ほとんど、あいさつのようなものだ。

 

 

以前ならここから笑いのネタの披露合戦がはじまるのだが、今回は違った。

えらく固い言葉、わりとまじめな話。

はじまってすぐ、ネタ切れのような言葉。

 

こちらが出す話にも、どこかうわのそら。

 

 

すこしの違和感。

 

 

何だかモヤっとしたまま時間が過ぎていく。

 

聞くかどうか悩んだが抑えきれず、雰囲気が違うことについて尋ねてみた。

 

 

 

「なんかえらくカタいけど、何かあった?」

 

「え?」

 

「ヤなことでもあった?」

 

「んー?別に?」

 

「そっか、なんか雰囲気違うなとか思ったり。」

 

「あはは、もうね、最近何にもなさ過ぎてね。何にもなくなったら自分にも何にもなくなっちゃった。笑」

 

 

 

 

息が詰まった。

 

今までいろんなことに悩んでいて、事あるごとに相談してくれた友人。

やっと仕事やプライベートがうまく運び、順調に進んでいると思っていた。

 

 

「ありゃ。もうこんな時間かー、ごめん眠いからまたね。おやすみ。」

 

 

そう言って早々に切られた。

 

 

 

もちろん、ただ疲れていただけかもしれない。

ほんとは、嫌なことがあったのかもしれない。

 

 

 

でもなんだか、うまくいかなかった時の方がいきいきとしてたように感じて。

 

 

 

 

 

 

演者は、僕は、しあわせだ。

目の前にいるみんなの「楽しい」、「切ない」って顔をひとりじめできるんだもの。

 

 

 

 

きっと、友人にもたくさんの喜びが、そして悲しみがある。

何もなくなってなんか、ない。

 

もっと感じてほしい、なにもかも。

 

 

 

五感、季節、感情。

ずっとずっと敏感でいたいな。

 

 

 

今度話すときはわくわくするような話、とんでもない事件。

 

 

 

 

 

 

 

そんなもの、なくたっていい。

 

ただ、いきいきとした声が聞きたいな。

 

それだけでいい。